大人も子どもも皆している独り言。
特に子どもは独り言をしている場面が多くあります。
独り言かと思っていたらこちらに話しかけていたり、こちらに話しかけているかと思ったら、独り言だったりと様々です。
大人の場合、一人暮らしの時って独り言増えますよね。
一人の孤独に対して無意識に自分の声を聞いて落ち着こうとしているのでしょうか?
ただ、集団に入る時大人になってくると独り言は少なくなります。
それは社会性が身についたから?
理由はそれだけではありません。
発達の過程で独り言に変化が出ます。
今日はそんな独り言についてのブログです。
独り言をする子ども
先日の一コマ
他の児童が準備を済ましている中、遅れて来所した児童。
家庭の事情があるので遅れることは問題ではありません。
ただ、色んなことに興味が移りやすかったり、色んなことを伝えたかったりするので作業がゆっくりなりがちなお子さんです。
集中を促すため
「話したい事は後で聞くから手洗いしようか」
と一言伝えて見守ります。
その間、彼は手洗いの過程でしゃべります。
その時の内容は手洗いに関するモノです。
「水を出すぞ」
「石けんつけて」
興味を引こうとしているわけではなく、作業に集中していたのでそっとしておきました。
ここで疑問。
なぜ子どもは独り言をするのでしょう。
言葉の役割
言葉には二つの種類があります。
一つは「内言(内的言語)」もう一つは「外言(外的言語)」です。
名前は、心理なのか保育なのか、など流派のようなもので変わってきます。
内言と外言には役割があります。
- 内言は考える時に使う
- 外言はコミュニケーションの時に使う
しかし、発達過程では外言の役割が変わります。
言葉の発達によって内言が育つ
始めに育っていくのはもちろん外言です。
初語から始まり徐々に言葉のバリエーションが増えていきます。
4歳ごろから徐々に内言が育ち、頭の中で考える力が発達していきます。
この頭の中で考える力が発達することで出来るようになるのが
関係のない2つのことを同時に出来るようになることです。
おしゃべりしながら、食事するなどが出来るようになります。
食事中にテレビを付けていると2歳児、3歳児では食べることが出来ません。
見ながら食べるという関係のない2つのことをすることが出来ないからです。
ただ、テレビは刺激が強すぎるので、年齢が大きくなってもコントロールが難しいですが。
参考文献
頭の中で考える過程で独り言は出てくる
3歳ごろの子どもは内言の獲得に向けてある行為をします。
それが独り言です。
独り言について心理学者のヴィゴツキーさんはこのように解釈しています。
子どものひとりごとは何か困った場面や、問題解決しようとする場面に多いこと、さらにその発言は自分自身に言い聞かせるように断片的につぶやいていることをみいだしていたのです。
つまり、ひとりごとは子供が一生懸命に自分で問題解決しようとする過程で、内面化が不完全なままの形であらわれた「内言の原型」であるととらえたのです。
引用文献
- 考える過程を頭の中だけ処理できない。だから言葉に出しながら整理していく。
それが発達の過程で大事になります。
独り言の種類
ヴィゴツキーは難しい課題を解決する時の独り言は2種類あるとしています。
- 自己中心的言語
- 要約的言語
自分の行動を言葉で調整する。
行動前の独り言。
例:「手を洗おう」
これらのひとり言は、幼児期に増加、ピークを迎えて、8~10歳ごろにほぼ消失するとされています。
参考文献
自閉症の方の独り言
一方で自閉症の診断を受けているお子さんも独り言が多い印象も受けます。
自閉症の当事者である東田直樹さんは著書で独り言についてこのように述べています。
変な声を出している時には、自分が言いたくて話をしているのではありません。もちろん、落ち着くために自分の声を聞きたくて、自分が簡単に言える言葉やフレーズを喋ることもあります。
コントロールできない声というのは、自分が話したくて喋っているわけではなくて、反射のように出てしまうのです。
見えたものや思い出に対して反射的に言葉が出る時があるようです。
もちろん当事者の発言だからといって全ての自閉症の方がこうだと決められるものではありません。
また、考えることを口に出すことも多い印象を受けます。
独り言にも色んな側面があることが分かります。
独り言への対応
考える過程の独り言と反射的に出ている独り言は別物のように感じます。
考えをしゃべっているのか、同じ言葉やテレビの場面などをひたすらしゃべっているかの違いがあります。
共通するのは止めるものでは無いことのかなと感じることです。
考える過程の独り言を止めることは、考えることを止めることに繋がります。
小さい年齢のお子さんならどんどん独り言をしてもらった方が内言の獲得に繋がりそうです。
反射的に言っている言葉については止めても止まるものではありません。
止めようとすると止める人も止められる人も疲れそうです。
見えたものや思い出への反射であれば、刺激を減らす、クールダウンを促すといった対応でトリガーになるものを無くしていくことで減っていきそうに思います。
内言を育てる遊び
内言を使う経験を促してみましょう。
クイズを出して答えを考えてもらい「せーの」で言う。答えを言うことを我慢してもらいます。
例
問題出題者
今からクイズを出すけど答えは「せーの」っていうまで言ってはいけないよ。
赤くて種がいっぱいの果物はな~んだ?
まだ答えを言ってはいけないよ。分かったら教えて。
せ~の
子ども
いちご!
内言が育ってない子は考える間ずっとしゃべっています。
この課題は頭の中で言葉をイメージする練習になります。