【ワーキングメモリーとは】システムと特徴、支援方法、遊びの整理!

知能を測定する評価方法の一つにWISCがあります。

知能とは

推論し、計画を立て、問題を解決し、抽象的に考え、複雑な考えを理解し、すばやく学習する、あるいは経験から学習するための能力を含む一般的な知的能力
 
学校生活で、授業を聞いて質問に答えたり、算数の問題を解いたりすることに影響することはもちろんのこと、生活の中で起きた課題を乗り越える時の考える時にも影響します。
WISCで測定を行うと4つの項目の指標が測定されます。
 
WISCの4つの指標
  • VCI(言語理解)
  • PRI(知覚推理)
  • WMI(ワーキングメモリー)
  • PSI(処理速度)
 
本日はその中のWMIを確認していきます。

 

ワーキングメモリーについて

ワーキングメモリーはWISC専用の言葉ではありません。
脳機能関連の本ではよく出てきます。
WMI(ワーキングメモリー)の項目は、名称通りワーキングメモリーを測定するものになります。

ワーキングメモリーとは

ワーキングメモリーは情報の一時的な「保持」と「処理」に関係します。

よくある例えが料理の場面です。

 

今日の献立はスープです。
お湯を湯沸し器で沸かしている間に材料を切って、お湯が湧いたらお鍋に入れて材料と調味料を入れて出来上がり。

 

これでは美味しいスープは出来ない!

ということは置いておいて。

 

スープの作り方を頭の記憶から引っ張り出て保持したり、お湯を沸かしていることを覚えておいて、材料を切ったりするなど、作業を同時に処理する時に使われるものがワーキングメモリーです。

マルチタスクを行うのに大事な役割を担っています。

 

ワーキングメモリーの保持時間は短いので、必要な情報をより長く保持するためには別の記憶の過程に引き継がれていきます。(記憶には色んなシステムがあるんです。)

ワーキングメモリーのシステム

ワーキングメモリーには4つのシステムがあるとされています。

ここの解釈は難しく、本を読んで作った僕のイメージを書きます。

間違えていたら教えてください。エピソードバッファと中央実行系は理解が難しいです。

 

  • 視空間性スケッチパッド
  • 音韻性ループ
  • エピソードバッファ
  • 中央実行系

 

視空間性スケッチパッド

視空間性スケッチパッドは見たことを一時的に保管するシステムです。

情報を視覚的に保持する力になります。

景色を写真のように思い出すことが出来る人が強いイメージです。

音韻性ループ

音韻性ループは聞いたことを一時的に保管するシステムです。

情報を聴覚的に保持する力になります。

聞いたことを覚える能力のイメージです。

エピソードバッファ

エピソードバッファは、課題遂行のために必要な記憶を長期記憶から引き出して保持するシステムです。

長期記憶は、長期間保持している記憶のこととです。その中には、数日後には忘れているものから、しっかりと記憶として貯蔵されて必要に応じて使える記憶があります。

先ほどのスープの作り方を思い出すことがエピソードバッファの役割になります。

中央実行系

中央実行系は視空間性スケッチパッドやエピソードバッファ、音韻性ループを制御するシステムです。覚えることや覚え続けることに注意を向ける時に限られた注意を振り分ける役割をもちます

ここまでのワーキングメモリーについての振り返り

WISCのワーキングメモリーの課題は言葉を聴いて行う課題になるので聞いて覚える力というイメージがあります。

しかし、システムを見るとそれだけではありません。見て覚える力や自分の経験を掘り起こす力も求められます。

また、聞いた言葉を頭の中で視覚化して覚える場合もあります。熊と言われたら熊の姿とセットに覚えるような時です。

一概にWISCでワーキングメモリーの評価が聞いて覚える力に振り切っているとは言えません。

また、集中できる環境でないとワーキングメモリーの力が発揮できないことも中央実行系が教えてくれています。

ワーキングメモリーの弱い子どもの特徴

ワーキングメモリーの弱い子どもと関わっている時に感じることがいくつかあります。

 

  • 言葉だけの話では集中出来ない
  • 複数の指示を出した時に作業を途中でやめる
  • 活動の修正が苦手

 

この3つを良く感じます。

書籍では、

全体をつかめず、理解が不十分となることも少ない

 

複雑な文章や説明は、記憶や推論を多く必要とするため、理解が不十分となりやすい。

等も挙げられています。

 

聞き逃していたり、間違えて覚えたりすることもあるため、会話でのやりとりや質問に対して、上手く返答出来ないこともあります。

今回書いている内容は聞いて覚えるものが多いので、ワーキングメモリーのシステムでも特に、

  • 中央実行系の注意のコントロールを行う
  • 音韻性ループの聞いて覚える
  • エピソードバッファの適切な情報を引き出す

 

これらのシステムが大きく影響しているのでしょう。

背景として、

  • 話を覚えることに集中しにくいため、聞き続けづらい
  • 聞いて覚える量が少ないため、作業を途中でやめてしまう
  • 適切な情報を留めたり、記憶の引き出しから引っ張り出すことが苦手なため、推論しにくい

等のことが考えられます。

 

それでは、ワーキングメモリーの弱い子にどのような支援をすると作業が行いやすくなるでしょうか。

ワーキングメモリーの弱い子どもへの支援

 

ワーキングメモリーの支援では

 

  • 注意が向いてから話す、注目するモノを出しながら話す
  • 伝える言葉の量を減らす
  • 絵や写真、文字など情報を残す
  • 片付けをして環境を整える

 

などが挙げられます。

注意が向いてから話す、注目するモノを出しながら話す

話を聞くときに、適切に注意を向けること、向け続けることが苦手な場合があります。

  • 名前を読んで、顔が向いてから話をする
  • 絵や写真等注目する所を分かりやすくする

など注意を向けやすくする工夫を行うことで話が聞きやすくなります。

伝える言葉の量を減らす

一度に覚えられる量に合わせて伝える作業の量を調整します。

  • 一つの指示を出して、作業を終えたら次の作業の声掛けをする
  • 簡潔に、短い言葉で伝える

など一度に伝える量を減らすことで作業の行いやすさが変わります。

絵や写真、文字など情報を残す

言葉は話すとすぐに無くなってしまうため、確認することが出来ません。

絵や写真、文字など情報を残すことで忘れてしまっても確認できるように環境調整を行います。

片付けをして環境を整える

只でさえ注意が逸れやすく、保ちにくい状況です。不必要なものがあったり、騒がしい場所ではより集中がしにくくなります。

  • 可能な限り整理整頓をする
  • 使ったものを片付けてから次の作業を行う
  • 静かになってから話す

などの刺激を減らす環境調整を行うことで作業が行いやすくなります。

 

ワーキングメモリーを使う遊び

脳機能を鍛えるためには、脳機能を使うことが大切です。

ワーキングメモリーに関連する遊びを紹介します。

カード取り

絵カードをいくつか並べ、出題者の言ったカードをとる遊びです。

いくつのカードを取れるかでどれくらいの言葉を一度に覚えられるかの評価にもなります。

絵カードがあるので、話に集中しやすくもなります。

段階づけ

慣れてきたら伝えるカードを増やすことで難しくなります。

3ヒントクイズ

3つのヒントから出題者がイメージするモノをあてるクイズです。

ヒント

「果物」「赤い」「種がいっぱいついている」

 

 

 

答え

いちご

と言ったクイズです。

ヒントを覚えて、推測するという練習になります。

段階づけ
  • 2つのヒントで分かる内容にする
  • 絵カードを置いて推測しやすくする

参考文献


 


 

以上、ワーキングメモリーについてでした。

今後も臨床に関する調べ事についてまとめていきたいと思います。

それではまた。